京繍の歴史
刺繍の技法がわが国に伝来したのは4~5世紀といわれていますが、中国の影響から脱却し、本当の意味での
日本刺繍として独自の技法を付け加え発展したのは奈良時代後期以降である。
日本刺繍の発展の歴史は、政治・経済の中心であった京都においてであり、即ち、京都の刺繍「京繍」の
歴史と言っても過言ではない。 以下は各時代の代表的な作品である。
飛鳥時代 「 天寿国繍帳 」
奈良時代 「 刺繍釈迦説法図 」
平安時代 この時代から公家社会において服飾に刺繍が施されるようになる。
刺繍に限らず遺例が極めて少ない。
鎌倉時代 「 刺繍大日如来図 」
室町時代 「 薔薇に橋文様水干 」
桃山時代 「 水禽文様繍箔小袖 」
江戸時代 商人の台頭と共に 刺繍糸に金糸・銀糸を使いそれと多彩な色糸を用いて刺繍の
主体性を発揮した絢爛豪華な美服が流行する。しかしたびたび幕府より奢侈禁止令が
発せられた。主な作品は下記である。
(初期)「 紅地山桜円文蔓草文様繍箔 」
(前期)「 花卉郡鹿文様小袖 」
(中期)「 麻の葉に花の丸文様小袖 」
(後期)「 花束に花菱繋ぎ文様内掛 」
明治時代伝統的な衣類等のほかに 壁掛・屏風・絵画風の刺繍等が作られる。
この頃から「貿易物」といって 輸出用刺繍(特に額)をする人が多くなる。
大正・昭和時代
「貿易物」と「呉服への刺繍」が盛んになる。
半襟への刺繍 その他ブローチ・パラソル 等にも刺繍を施した。
1940年7月七・七禁令が発せられ一部の職人を除き職を失う。
戦時中には 軍の章をも刺繍した。
1976年12月 伝統的工芸品「京繍」として現・経済産業省より指定・認定を受ける。
2008年現在 京繍の伝統工芸士 認定者数は42名